高辻麗の消失

ナナニジにとって11月は悲しい季節だ。

長い長い夏がすぎ、すっかり短くなってしまった秋の最中。

すこしずつ冬の足音が聞こえはじめる11月。

その知らせは、突然過ぎた。

 

10月後半から高辻麗は体調不良ということで、イベントや収録の欠席が続いていた。

冗談で友人と、

「アニラのレッスン、れったん間に合わねんじゃね?れったんいなかったら困るなー」なんて、呑気に話してた。

 

ただ、嫌な予感はどこかにあった。

そう、2019年の花川芽衣の時とまったく同じ予感。

言っても詮無きことだし、的中するわけないと願っていたけれど。

なぜかナナニジに関しては嫌な予感ばかり、的中してしまう。

2021年11月1日、高辻麗は突然僕の前から「消失」してしまった。

 

 

高辻麗。れったん。

 

2016年。ナナブンノニジュウニオーディションに最年少で合格。年齢は…まぁ非公表だし記さないでおこう。

滝川みう」役として仮割当される。

2017年。名付け親募集企画にてオーディション最終審査時の19番ちゃんから、芸名として高辻麗となる。本名の…これもやめておこう。

その後正式配役決定。まさかの滝川みう役から落選。配役無しとなる。

「選ばれた8人」と「選ばれなかった3人」の11人がナナブンノニジュウニの基本形となる。リリースされたデビューシングル「僕は存在していなかった」も8人での歌唱形態である。

選ばれなかった3人は、とにかく何をするにも除外された。

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懐かしい当時のれったん

2018年。1年越しにようやく「東条悠希」として配役が決定。

基本的にナナブンノニジュウニはキャラクターと声優アイドルで類似する面が多少なりはあるはずなのに、悠希と麗に関しては一切それが無かった。

配役決定の嬉しさにかき消されたけれど、当時ちょっとした違和感を感じたこと覚えている。

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髪ショートボブにしたのもこの頃。

2019年。定期公演はじめ、11人での活躍時期。

翌年にようやくアニメ開始の発表や、11人での初のリードシングル「何もしてあげられない」リリースなど、ナナブンノニジュウニにとってようやく訪れた黄金期とも言えた。

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何も〜の頃のれったん。

 

そんな折に花川芽衣の卒業。このあたりのくだりは前回書いた拙記事を読んでほしい。

kaju227.hatenablog.com

 

2020年。アニメ放送開始。なぜか「選ばれた8人」の物語。

「選ばれなかった3人」は最終話Cパートのみの出演ということで、本編には全く登場しない。

5thシングルである主題歌「ムズイ」も3rd「理解者」までと同様に8人での歌唱曲に戻ってしまった。

高辻麗は3ヶ月の長期休養に入る。

ようやく11人で活動できる喜びからの、待望していたアニメがまさかの「選ばれた8人」の回帰だった現実は、今まで我慢を重ねてきた思春期真っ只中の少女の心を壊すには充分すぎた。

5月。高辻麗は復帰する。

復帰後は、それこそ水を得た魚のように、あらゆる場面で先頭に立った。

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CD発売直前のサンプル開封配信とかも。運営はなんでもかんでもれったん起用してた。



 

2021年。高辻麗の1年といっても過言ではなかった。

計算中では正直モブ以下の出演だったseason1からの成長が芳しい。制作スタッフサイドも明らかに扱い方を変えていたように思う。バラエティ番組としての全体の場回しから盛り上がりのポイント、緩急までをも作ってくれる悠希(高辻)を主軸にするような企画やシーンも散見された。

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計算中もいつの日からか出ずっぱりになった。コメントや企画が採用されることも増えた。



 

舞台出演も次々と決まっていった。爆走おとな小学生主催公演の「勇者セイヤンの物語」では初主演でヒロインのソウコを熱演。

その後も「コトバノコトバ」「サイキック学園~青春超能力バトル~」「初等教育ロイヤル」「漢のピリオド.〜The Last Stage〜」と、爆走おとな小学生の公演に連続で出演し、あらためて非凡な才能を惜しみなく僕らに見せつけた。

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個人的に一番すきなコトコトのクーナ。

舞台としては他にも「アサルトリリィ・御台場女学校編」にも海乃るりと出演したことも付記しておく。

ナナブンノニジュウニの活動として他にもたくさんあるけれど、半チャーハンとかユニットプロデュース企画などは特に記憶に残っている。

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さいきょーちゃいなたむ。

何より特筆すべきはリーダーである帆風の卒業ライブとなった「僕が持ってるものなら発売記念Live」だ。

基本的にナナニジのライブはリーダーである帆風が場回しをする。

しかし、当日の場回ししたのは高辻だった。次代のナナニジを引っ張っていくのは高辻麗しかいないとまで思えた。

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みんな泣き崩れてボロボロの中、しっかり司会を勤め上げた。

他にもたくさん書きたいことあるのだけど、本筋からどんどん外れていくのでここでは記さないでおこう。

 

冒頭で述べた嫌な予感を感じていた理由として、常に引っかかっていたのは、高辻麗が「活躍しすぎ」ていたからだ。

復帰後の高辻麗は運営側に便利に浪費されているように思えた。

もちろん、本人のやる気からくる意志もあったと思うが、運営がアンコントローラブルになっている状態とも言えた。

SHOWROOM配信やインスタライブ配信では明らかに過労が目に見えた。寝落ちしそうになっていたことも一度や二度じゃなかった。

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とある日のインスタライブ。明らかに疲れていた。



高辻麗は頑張り過ぎてしまうのだ。

それは、約束された仮配役から地獄の底に落とされたあの思いを、もう二度と味わいたくないという出自からに違いなかった。

いつか壊れてしまうのではないかという脆さを内包していた。

そしてそれがついに来てしまった、ということなのかもしれなかった。

 

花川芽衣が卒業し、アニメも終わり。コロナ渦という状況もあり。

離れかけてたナナニジへの想いを繋ぎ止めてくれたのは高辻麗である。

偶然参加したオンライントーク会。

一方的に僕が想いを吐露したあとで、れったんは

「んー、まだナナニジ応援してくれるなら、推し誰か決まるまで私を応援したらいいよっ!」

その言葉に本当に救われた。

誤解ないように言うと、高辻麗は僕の中で決して花川芽衣の代替ではなかった。

ファンクラブサイトに推しを設定する機能があるんだけど、空白だったその欄に、僕ははじめて高辻麗を設定した。

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2021年11月1日、僕がれったんを推し設定してから427日目だった。

トーク会ではれったんといろんな話をした。

変なTシャツに突っ込まれて、毎回見せるように変なTシャツを探しては着るようになった。

ナナニジ界隈であまり友人は作らないようにしていたのだけど、ウマが合う友人ができたことを話した時は自分のことのように喜んでくれた。

れたやま先生の占いはめちゃくちゃ楽しかったし、自分もいつの間にかタロット占いができるようになっていた。

応援しているよとただ伝えたいだけだったのに、なぜか応援されていたのはいつも僕の方だった。

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本当に楽しかったオトク会。

 

花川芽衣は周知の通り、浅倉唯として完全復活を遂げた。

今年7月、仮面ライダーバイスの出演が大々的に発表されてからというもの、自分のパワーバランスもナナニジ一辺倒から浅倉唯にシフトし始める。

僕の中の花川芽衣ロスは1年半の時を経てようやく終わりを迎えたのである。

ただ、心のどこかに引っかかる違和感。

浅倉唯は花川芽衣ではなかった。そして、僕はとっくに過去の自分と決別できていた。

 

これはタイミングなだけでただの偶然でしかないのだけれど。

高辻麗はその役割を終えたかのように僕の前から「消失」してしまった。

芽衣が復活したから、もう大丈夫だね!」って言われた気がしてならない。

もちろん気の所為なのはわかっているけど。

 

もうどうしようもなくなってから気付く。

本当にいつもいつも気付くのが遅くて嫌になる。

そうか、もう僕はすっかり高辻麗に魅せられていた。

何も言えないままこれで終わりなのかと、ただただ後悔しか残っていない。

でももうどうしようもない。

 

もう二度と会えない可能性の方が高いだろう。

ナナブンノニジュウニを知らない人たちは、メディアが取り上げた解雇の報だけみて、れったんに心無い言葉を好き勝手放っている。

高辻麗が歩んできたこの5年の茨の道。常に血と涙を流しながら努力し続けてた5年間。

僕は決して忘れない。

 

そして。

叶うことならば、どこかでまた元気な姿を見せてくれること切に願う。

決して訪れないかもしれないその日に想いをはせつつ、ヒヤシンスの球根を植えるところからはじめようと思う。

 

ありがとう、れったん。ずっと好きでした。